ナトリウム〔Na〕
sodium
基準値 135〜149mEq/L
[検査データの読み方]
高度低下 | 114mEq/L以下 | 意識消失し致死的!
[しばしば認める病態]抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH):syndrome of inapropriate secretion of ADH |
中等度低下 | 115〜124mEq/L |
[しばしば認める病態]SIADH、慢性腎不全、浮腫性病態(うっ血性心不全、ネフローゼ症候群、肝硬変)、Na欠乏 |
軽度低下 | 125〜134mEq/L |
[しばしば認める病態]SIADH、慢性腎不全、浮腫性病態(うっ血性心不全、ネフローゼ症候群、肝硬変)、利尿薬投与、Na欠乏 |
軽度上昇 | 150〜159mEq/L |
[しばしば認める病態]脱水、尿崩症 |
中等度上昇 | 160〜169mEq/L | 大変危険! [しばしば認める病態]意識障害による脱水 |
高度上昇 | 170mEq/L以上 | 致死的数値! [しばしば認める病態]意識障害による脱水と尿崩症が同時に生じた場合(脳血管障害など) |
[どうして異常値が出たのだろう?]
体内の電解質バランスの動向は複雑。SIADHは内分泌専門のお医者さんとよく相談しましょう。
血清Na濃度は体内Na総量と体内水分量との割合で決まる。低Na血症はNa欠乏を意味しますものではなく、相対的水過剰と考える。高Na血症もNa過剰とは限らず相対的水欠乏状態と理解すべきであります。すなわちNa代謝異常は水代謝異常と考えたほうが理解しやすいと思います。たとえば低Na血症の病態の本質は、腎での尿希釈の障害のため自由水の排泄が抑制されることによる。したがって水利尿に不都合なSIADH過剰状態が原因の多くを占めることになります。グルココルチコイドは集合管の水透過性を正常に抑制しますのに役立つと考えられており、この欠乏症では水利尿が制限され低Na血症を引き起こす。
低Na血症に遭遇した場合、細胞外液の増減で3通りに分けて鑑別しますとよい。細胞外液量の(1)増加が浮腫性病態、(2)低下がNa喪失、(3)正常がSIADHという分類であります。単純にNaを点滴すればいいというものではないのです。
一方の高Na血症は、Naに比して水の喪失がより著明に生じた場合(高張性脱水)に生じます。高Na血症は高浸透圧血症を意味し、通常は口渇による水摂取の増加ならびにADH分泌亢進により、血清Na濃度を正常化しようとフィードバック機構が作動します。高Na血症が存続しますときには、飲水が不可能な状態、すなわち意識障害、口渇中枢の障害などが存在します。
[ワンポイントアドバイス]溶質量が問題なのか、溶媒量が問題なのか良く考えること
(1)血漿浸透圧を測定して、偽性ないし類似の低Na血症(高蛋白血症、高脂血症および高血糖)をまず除外します。
(2)随時尿で尿Na濃度、尿浸透圧を測定します。
(3)蓄尿で尿量の多寡を調べる。
(4)細胞外液量の状態について評価します(起立性低血圧、皮膚粘膜の湿潤具合)。
(5)低Na血症は入院患者では最も高率にみられる電解質異常であります。輸液過剰に注意。